ピタゴラス学派(Pythagorean school)

哲学は、イオニア地方の他にも、イタリア半島に芽吹いていた。
半島の“靴底”に位置するクロトンにいたピタゴラス(B.C.570頃〜?)が、宗教教団のような性格を持つ独自の学派を創始したのである。

ピタゴラス学派の関心は、“世界は何からできているか?”ではなく、“世界を秩序づけているものは何か?”にあった。
そこで、万物のアルケーは「」であると言った。

まず、数は、誰が計算を行なっても同じ結果になり、文化が異なっていても共有できるため、アルケーとするための条件を備えている。
次に、世界は、数(比例)によって「調和ある全体」(コスモス)として描き出すことができる。
たとえば、正三角形は単純な整数の和によって表現できるし、音楽においては弦の長さと和音との間に美しい比例関係が見出せる。
また、天体(宇宙)にも数的調和が見て取れる。
数と比例は、世界を秩序づけている原理であるはずだ——
彼らは、そう考えたのであった。

一方、ピタゴラス学派の哲学として重要なのが、「ソーマ・セーマ」(「ソーマ」=肉体は「セーマ」=墓場である)の考え方である。
魂(プシュケー)はもともと神のもとにある不死のものだが、「輪廻転生」によって人間や他の動物へと何度も生まれ変わる。
しかし、肉体は魂の自由を奪う墓場である。
とすれば、善い生き方とは、魂が本来のあり方を発揮できるような生き方である。
そのため、ピタゴラス学派は、魂をなるべく肉体から切り離して安寧を得るために、数学や音楽、天文学の研究に没頭したのである。
ちなみに、「ソーマ・セーマ」の考え方は、のちに、ソクラテスやプラトンに影響を与えることとなった。

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