(ニュッサの)グレゴリオス(Gregorios Nyssa)

ニュッサのグレゴリオス(335頃〜394)は、4世紀のキリスト教神学者で、代表的なギリシア教父である。
ペルシア(現イラン)に生まれ、372年からニュッサ(現トルコ中央部)の主教を務めた。

グレゴリオスは、ギリシア語で数々の著作を著したが、主著は『モーゼの生涯』である。
この『モーゼの生涯』のなかで、グレゴリオスは、およそ次のように語っている——

すべてのものは、ある状態から別の状態へと絶えず生成変化している。
この生成変化は、よりよい状態へ向かうか、より悪い状態へ向かうかのどちらかである。
同じことは、われわれ人間についても言える。
われわれが何かを行なうとき、そこには新たな状態が生じる。
それゆえ、われわれはみな、新たに生じる状態の父だと言える。
この新たな状態を生み出すのは、個人の選択=「プロアイレシス」である。
つまり、個人の選択は、わずかながらであったとしても、世界の状態を、よりよい状態か、より悪い状態のどちらかへと変える力を持っていると言えるのである。

このように、グレゴリオスは、よりよい状態へ向かう(神の創造に協力する)選択をする決断こそが人間にとって重要であると考えた。
そうした選択を積み重ねることによってグレゴリウスが到達しようとしていたのは、神の恩寵(おんちょう)に満たされ、“神の友”になるという状態であった。

“神の友”になる状態というのは、神に対してすべてを語ることができる「パレーシア」の状態のことである。
あるいは、個人として神と語り合う「エクスタシス」の状態のことである。
魂が肉体から解放され、自己を忘れて神と1つになるエクスタシスの状態を目指した新プラトン主義者のプロティノスと比較すると、(1)神と語り合う状態を目指したこと、(2)さらにその際、同じエクスタシスを目指しながらも、自己を忘れるのではなく逆に個人(個的人格)は生きていると考えた点に、グレゴリウスの哲学の独自性が見出される。

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