[ブックガイド]中世哲学篇

各哲学者に関する解説のなかで取り上げた著作(翻訳)とは別に、入門者にとって有益な中世哲学に関する書籍を紹介したい。

中世哲学の入門書や概説書は、古代哲学や近世・近代哲学の分野にくらべると圧倒的に数が少ない。
この事情は、西洋哲学史のなかでも中世哲学は、その意義自体は高いにもかかわらず、他の時代区分にくらべてマイナーであることを示しているが、そうした状況のなかでも中世哲学全体を見渡した優れた入門書・概説書は当然、存在する。

[ブックガイド]哲学史入門篇」でも紹介したが、『西洋哲学史——古代から中世へ』(熊野純彦 著)は、古代哲学と中世哲学にまたがっているが、タレスからウィリアム・オッカムまでの哲学の流れを原典に即してオーソドックスに解説しており、中世哲学を古代哲学からの流れのなかで理解することができる優れた入門書である。
神を哲学した中世」(八木雄二 著)は、中世哲学の核となったキリスト教神学独特の“わからなさ”について“わかりやすく”解説することによって、中世哲学を理解するうえで必要な当時の考え方の枠組みを紹介している。
また、同じ著者・八木雄二氏による『天使はなぜ堕落するのか』は、『神を哲学した中世』の詳細版とも言え、約600ページにも上る大著だが、「哲学のもつ基本に忠実に説明してもらいたいと願っているひとのために書いた」(「はじめに」)もので、入門者にもある程度とっつきやすい記述になっている。
中世哲学について、しっかりとした見通しを得たいという方であれば、『神を哲学した中世』よりも『天使はなぜ堕落するのか』のほうをオススメする。
なお、中世哲学の周辺思想までも含めて俯瞰したい場合は、『中世思想史』(クラウス・リーゼンフーバー 著)が適している。
著者はキリスト教神学者で、中世キリスト教思想を中心に記述しているが、本書には中世思想を俯瞰するに充分な情報が豊富に盛り込まれているため、中世思想事典のような使い方ができ、有益である。

各哲学者の哲学について、さらに詳細に学習したいのであれば、アウグスティヌスについては『アウグスティヌス』(富松保文 著)と『アウグスティヌス講話』(山田晶 著)、トマス・アクィナスについては『トマス・アクィナス』(稲垣良典 著)および『トマス・アクィナス『神学大全』』(稲垣良典 著)、中世哲学最大のトピックとなった普遍論争については、『普遍論争』(山内志朗 著)といった入門書・概説書が、それぞれオススメである。

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