倫理学の区分

倫理学は、その対象や問い方によって、大きく3つに区分される。
規範倫理学」「メタ倫理学」「応用倫理学」である。

規範倫理学

倫理学の定義」で見たように、「いかに生きるべきか」「人はいかにふるまうべきか」といった〝善に関する問い〟に答えるのが規範倫理学である。
つまり、ソクラテスやアリストテレスの時代から続けられてきた〝正統的〟な倫理学である。
そのため、たんに「倫理学」と言った場合、規範倫理学のことを言う。
規範倫理学の代表としては、「徳倫理学」「功利主義」「義務論」がある。

メタ倫理学

20世紀初めに、ジョージ・エドワード・ムーアが、「善い」や「正しい」といった倫理的概念や言葉を分析する必要性を唱えた。
それが、メタ倫理学の始まりだとされる。
それまでの倫理学(規範倫理学)は、「〜するのが善い」「〜であるべきだ」という規範や、それを判断する基準を問題としてきた。
つまり、客観的に存在する(と思われていた)〝善〟を概念や言葉によって正確に言い表すことを課題にしてきたのである。
これに対し、メタ倫理学は、「〜するのが善い」「〜であるべきだ」の「善い」や「べき」を問題にした。
つまり、たとえば「人に親切にするのは善い」と言うとき、その言葉は「東京のど真ん中に皇居がある」というように客観的な事実を言い表しているのか/いないのか、あるいは、そう発する者の主観的な感情や態度を言い表しているのか/いないのか、そうした言葉はどのようにして使われているのか、〝善い〟とか〝べき〟とか言い切れる基準はあるのか/ないのか……などと問うたのである。
ちなみに、メタ倫理学の「メタ」とは、形而上学を意味する「メタフィジック」の「メタ」と同じである。
形而上学は、古代ギリシアの哲学者・アリストテレスによって自然(フィジック)の探究の〝あと〟(メタ)に扱われたため「メタフィジック」と呼ばれるようになった。
これに倣って、メタ倫理学は、規範倫理学のあとに現れたため、こう呼ばれることとなった。

応用倫理学

科学技術の発達や人間生活の変化に伴って生じた現代特有の問題を対象にするのが、応用倫理学である。
具体的には、人工妊娠中絶やクローン、安楽死・尊厳死、脳死・臓器移植など、医療の発達に伴う問題を扱う「生命倫理学」、地球温暖化や自然の権利、世代間倫理など、ライフスタイルの変化に伴う問題を扱う「環境倫理学」、知的財産やプライバシーの尊重、コンピュータネットワークの不正利用など、デジタル技術とインターネットの発達に伴う問題を扱う「情報倫理学」などに区分される。
留意すべきは、応用倫理学では、規範倫理学で培われてきた視点や方法論を、そのまま問題に適用して良しとするわけではないということだ。
なぜなら、応用倫理学が扱うのは規範倫理学が想定していなかった〝未知の問題〟であり、そうした問題はそれまでの道徳規範や価値観ではなかなか解決することができないからである。
そのため、応用倫理学では、規範倫理学の知見を踏まえながらも、ときには根本的で新しい探究が要請されるのである。

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