【生命倫理学】QOL(生命の質、生活の質)

QOLとは何か?

かつて、人間の生命は神聖なものだと考えられ(「生命の尊厳」)、医療においては、その生命をいかに維持するかということが最優先された。
しかし、医療が発達してくると、結果的に、ただ医療機器の助けによって患者を生かしているだけの延命治療が増えてきた。
こうした状況では、死期が迫り激しい痛みに苦しむ患者であれば、苦痛をただ長引かせるだけになる。
これは、〝よく生きる〟というあり方から、かなり隔てられた状態だ。
ここから、人間にとって重要なのは、ただ長く生きたり、たんに生きつづけたりすることではなく、どれだけ充実した人生を送ることができるかだという考え方が生まれた。
これが、「QOL」(Quality of Life)であり、「生命の質」「生活の質」と訳される。
つまり、QOLとは、ある人が〝人間らしさ〟や〝人間らしい生き方〟をどれだけ維持できているかを示す指標あるいは概念のことなのである。

QOLの問題点

QOLについて考える際に気をつけなければならないのは、QOLとは一人ひとりの生き方の選択——〝自分はどのような生を選ぶか〟という本人の価値観——にもとづくものであり、決して他人が判断するものではないということである。
なぜなら、他人がQOLを判断するということは、その患者の生の価値を他人が評価することになるからである。
さらに言えば、生きるに値する人間と生きるに値しない人間とを区別する発想を生み出しかねず、最悪の場合、優れた生を残し、劣った生を排除する「優生思想」に行き着く恐れさえあるからである。
なお、QOLや優生思想の問題は、人格=〝人間らしさ〟の要件について論じた「パーソン論」と深く関連している。

※パーソン論については「【生命倫理学】人工妊娠中絶」でも言及している

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