【功利主義】ミル(Mill):質的功利主義

ジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill、1806〜1873)は、ベンサムの教え子であった父ジェームズ・ミルによって幼少期から徹底した英才教育を受けて育った。
その影響により、ミルは、功利主義の第一人者となる。
しかし、彼の人間の捉え方は、ベンサムとは異なっていた。

「快楽」(快)はすべて質に違いはなく、肉体的快楽も精神的な快も同質であるとするベンサムの考え方は、「ブタにふさわしい学説」と批判された。
この批判を受けてミルは、快はすべて同質ではなく、〝質が高い快〟と〝質が低い快〟とに分けられると唱えた。
〝質が高い快〟とは精神的な快のことであり、〝質が低い快〟とは肉体的(感覚的)な快楽のことである。
そして、肉体的な快楽と精神的な快の両方を経験したことがある者ならば、肉体的な快楽よりも精神的な快のほうが〝優れた快〟であることを認め、そちらのほうを選ぶはずだと考えた。
なぜなら、人間には誰でも(程度の差はあるものの)「尊厳の感覚」がそなわっていて、〝自分は動物ではなく人間である〟という自覚のもと、人間としてふさわしい生活態度をとるはずだからである。
そのため、肉体的な快楽と精神的な快という2つの快を比較するのに、それぞれに含まれる快の量を問題にする必要はないと述べた。
ミルは、こうした自身の考え方を、『功利主義論』(『世界の名著 49 ベンサム/J.S.ミル』に所収)という著作のなかで、「満足したブタであるよりも不満足な人間であるほうがよく、満足した愚か者であるよりも不満足なソクラテスであるほうがよい」と端的に表現している。

こうしたミルの立場は、「質的功利主義」と呼ばれている。

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