直観主義(intuitionism)

前のページで紹介したように、ムーアは、善を自然の性質に還元して定義することはできないと考えた。
それでは、善とはいったいどのようなものなのだろうか?

ムーアによれば、〝善とは何か?〟という問いは、〝色とは何か?〟という問いと同じだという。
たとえば、〝黄色とは何か?〟と問われたとしよう。
この問いに対して、世の中の黄色いものをいくら列挙したところで、〝黄色とは何か?〟という問いに答えたことにはならない。
なぜなら、この問いが問うているのは、自分が見たその色は青や赤ではなく、たしかに黄色だと知覚する体験そのものだからだ。
黄色を見たことがあれば、黄色がどんな色かは知っている。
しかし、〝黄色がなぜ黄色で、青や赤でないか〟について説明することはできない。
黄色は黄色だから黄色なのだ。
善も同じである。
善を知っていても、それを定義することはできない。
善は〝善い〟から善なのである。
つまり、善は、直観的に把握されるものなのだ。
こうしたムーアの立場を「直観主義」(直覚主義)と呼ぶ。

「直観主義」そのものはあまり支持されることがなかったが、「自然主義的誤謬」とともに、ムーアの問題提起は、その後の倫理学に大きな影響を与えた。

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