【徳倫理学】現代における展開(4):ハーストハウス(Hursthouse)

アンスコムフットの哲学を引き継いだ哲学者・倫理学者の代表が、イギリスの哲学者・倫理学者ロザリンド・ハーストハウス(Rosalind Hursthouse、1943/11/10〜)である。
ハーストハウスは、その著書『徳倫理学について』のなかで、植物や動物にとっての〝善いあり方〟について考えることを通して、人間にとっての徳について考えた。

ハーストハウスによれば、たとえば、ある植物が「善」(エウダイモニア)であると言うことができるのは、その植物の葉や根、花びらといった各部分が充分に機能し、それによって、その植物自身が生存し、その植物の種が存続することができる場合に限られる。
また、ある動物が「善」だと言えるのは、その個体の各部分が充分に機能し、(1)その動物自身が属する種ならではのやり方で苦から逃れ、快を享受し、それによって、(2)その動物自身が生存し、(3)その動物の種が存続することができる場合に限られる。
さらに、群れて暮らす社会性のある動物にとって「善」だと言えるのは、上記(1)(2)(3)に加え、(4)その動物自身が、みずからが属する種にとって適切な役割を果たす場合に限られる。
このことについて、ハーストハウスは、〝針のないハチは、巣を機能させ、巣そのものを維持するという点で不完全である〟と言い表している。

ハーストハウスは、こうした植物や動物のあり方を人間に当てはめ、上記(1)(2)(3)(4)の目的を果たす性格特性こそが人間にとっての徳だと唱えた。
徳倫理学は、徳がどのようなものであるかについて明確化しなければ、何が正しい行為なのかを判断する客観的な根拠を持ちえないという批判と課題に直面していたが、ハーストハウスの学説は、こうした批判と課題に対して1つの〝答え〟を示したのであった。

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