【徳倫理学】ヒューム(Hume)

近世において、徳に関する目立った考察を行なったのは、イギリスの哲学者ヒュームである。

イギリス経験論の系譜に属するヒュームは、その著作『人性論』(人間本性論)において、感情(情念)は理性に勝るとの立場から、善悪の判断について、理性よりも快不快の感情を重視した。
つまり、徳というのは自分に快を与える心の性質であり、不快(苦)をもたらす性質は悪徳だということである。
〝道徳の根拠は理性ではなく感情にある〟と、ヒュームは考えたのである。

しかし、ヒュームは、〝道徳に理性はまったく必要ない〟と唱えたわけではない。
徳は本来、感情にもとづくが、社会生活を営むのに快不快だけで徳を決めることはできないので、理性にもとづき形成される徳も要請されると考えた。
こうした考えにもとづき、ヒュームは徳を「自然的徳」と「人為的徳」に区別した。
「自然的徳」とは、心に直接、快を与える徳で、「自愛」「(親から子への)情愛」「慈愛」などが、その例として挙げられる。
いわば、人間に本能的に備わる徳である。
一方の「人為的徳」とは、人間によって形成される社会的な徳で、「正義」「正直」などが、その例である。

こうしたヒュームの考え方は「感情主義」と呼ばれ、ソクラテスやプラトンとは逆の立場をとった。

※関連ページ:
 「ヒューム:印象と観念
 「事実と価値

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