【生命倫理学】遺伝子技術(genetic technology)

遺伝子検査

遺伝学と遺伝子技術が発達したことによって、遺伝的な要因で発症する病気=遺伝性疾患について、その原因となる遺伝子に異常がないかどうかを検査する「遺伝子検査」が行なえるようになった。
これにより、検査を受けた本人における発症の可能性や、胎児への遺伝の有無がわかるようになり、疾患の早期発見や将来に向けた心と生活の準備が可能となった。
しかし、その一方で、発症可能性を知ったことで不安に陥ったり、中絶を決心したりする問題が生じている。
米国では、遺伝子検査の結果、就職や保険加入を断られるケースも生じた。
また、個人情報である遺伝情報の漏洩や、遺伝情報による差別も懸念される。

遺伝子治療

遺伝病を治療する「遺伝子治療」は、(1)疾患を治療するための遺伝子を組み込んだ細胞を患者の体内へ取り入れる方法と、(2)疾患を子どもへ遺伝させないように生殖細胞の遺伝子を改変する方法とに大別される。
どちらもまだ治療としては実施されていない。
(2)の方法は、先天性の疾患の可能性を未然に除去できるが、〝生命の選別〟や障害者への差別へとつながる恐れが指摘されている。
また、〝遺伝子を操作することは生命を都合よく改変することであり、生命への冒涜である〟という批判もある。

エンハンスメント(増進的介入)

遺伝子治療の技術を応用し、人間に備わるさまざまな能力を増強したり、機能を強化したりする=「エンハンスメント」(増進的介入)も現実味を帯びてきている。
たとえば、スポーツ選手が筋力を強化したり、一般人が集中力を向上させたりするといったことから、屈強な身体や高い知性を身につけたり、そうした形質を備えた子ども=「デザイナー・ベビー」を得たりするといったことが可能になるという。
エンハンスメントは、人間の可能性を広げるという見方がある一方で、優生思想を助長したり、人間の欲望の歯止めを外してしまったりする恐れがあるとの批判がある。

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