【環境倫理学】地球全体主義(earth totalitarianism)

地球全体主義とは?

近現代社会において、人びとや企業、国家は、それぞれの利益を自由に追求してきた。
しかし、その自由は環境破壊を招き、私たち自身の生存を危うくしつつある。
地球は閉じた体系であり、利用できる資源やエネルギーには限りがある。
だとすれば、私たち自身が生産と消費を制限し、地球全体の利益を守らなければならない——
こう考えるのが、「地球全体主義」(地球有限主義)である。

「宇宙船地球号」と「ガイア仮説」

地球全体主義の先駆として位置づけられるのが、「宇宙船地球号」の概念と「ガイア仮説」(ガイア理論)である。
「宇宙船地球号」という言葉は、米国の思想家・建築家であったリチャード・バックミンスター・フラー(Richard Buckminster Fuller、1895-1983)の著書『宇宙船地球号操縦マニュアル』によって広まった。
フラーは、1963年に著したこの著作のなかで、人類と地球の存続のためには、有限な資源を消費しつづけるべきではなく、太陽や風力、水力といった自然エネルギーだけで生活できるように政治と経済のシステムを変える必要があると説いた。
また、米国の経済学者ケネス・エワート・ボールディング(Kenneth Ewart Boulding、1910-1993)は、1966年に公表した論文「来たるべき宇宙船地球号の経済学」(『リーディングス環境 第1巻 自然と人間』に所収)において、人類は無限の資源を想定した従来の「開かれた経済」から、地球は一隻の宇宙船にすぎないという認識のもと、循環する生態系やシステムに見合った「閉じた経済」へと移行しなければならないと説いた。
一方、「ガイア仮説」(ガイア理論)は、イギリスの科学者ジェームズ・ラブロック(James Lovelock、1919-)によって1960年代に唱えられた。
これは、〝地球は一つの生命体のように自己調節システムを備えている〟とする見方である。
そのため、ガイア仮説に従えば、人間が地球に働きかける場合は、生命圏や大気圏、海洋、土壌といった地球全体を視野に入れるべきことになる。
なお、ガイア仮説は、〝地球は動物や植物のような生命体である〟〝地球は意識を持っている〟と主張するのでは決してない。
ラブロック本人も断言しているように、あくまでもメタファーである。

地球全体主義の課題

地球全体主義は、その名のとおり、地球全体の利益を最優先に考え、利益の配分や資源の確保、廃棄物の処理を集中管理する地球規模のシステムを構築することまで視野に入れる。
そのため、個人の自由や利益は、どうしても制限される傾向にある。
この傾向が強まると、環境保護の名のもとに経済的自由や生活が制限されかねない。
つまり、環境保護のための全体主義=「エコファシズム」が生じる恐れがある。
その一方で、さまざまな思惑や事情を抱える世界各国が、環境保護のためとはいえ、本当に足並みを揃えることができるのかという疑問が湧く。
無理にまとめようとすると、離反国が相次ぐ可能性があろう。
また、地球規模のシステムを構築するにしても、誰がどの程度の権限を持ち、どうやって統制するのかという課題がある。
あるいは、そうした全体主義的なシステムを構築しなくてもよい解決法が検討されてもよいであろう。

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