【徳倫理学】現代における展開(1):アンスコム(Anscombe)

近代においては、徳に関する目立った考察は行なわれず、道徳に関する議論は「義務」や「権利」が中心で、〝どのような行為をなすべきか?〟が問題とされた。
しかし、20世紀後半になると、アリストテレスが唱えた倫理的な概念を現代に復活させようという動きが起こり、〝どのような人間になるべきか?〟が問題とされた。
この動きの先駆者は、イギリスの哲学者アンスコムであった。

ガートルード・エリザベス・マーガレット・アンスコム(Gertrude Elizabeth Margaret Anscombe、1919/3/18-2001/1/5)は1958年、「現代の道徳哲学」(Modern Moral Philosophy)という論文を発表した。
このなかで彼女は、〝カントの義務論は道徳法則の「立法者」=神の存在を前提にしているが、いまや多くの人びとは神を信じておらず、よって「立法者」を前提することや、その「立法者」に由来する「義務」を想定することは無意味である〟と述べた。
また、義務論とは対照的な功利主義に代表される、〝ある行為の結果(帰結)がよければ、その行為は道徳的である〟という「帰結主義」(consequentialism)をも批判した。
そして、倫理学の主題となるべきなのは、「義務」でも「帰結」でもなく、アリストテレスが唱えた「幸福」(エウダイモニア)を実現する「」(アレテー)なのであって、そのためには心理学の哲学によって「行為」「意図」「快」「欲求」といった概念を解明することが必要である——
そうアンスコムは唱えたのであった。

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