【生命倫理学】医療の発達と倫理

医療の発達は、それまで不可能だと思われていたことを徐々に実現できるようになってきた。
子どもが欲しくても恵まれないカップルは、「生殖補助医療」、とりわけ「体外受精」によって、子どもを持てる確率がかなり高まった。
生まれつき臓器に重篤な疾患を持つ人は、「脳死」になった人から臓器を提供してもらう「臓器移植」によって、生き延びることを諦めずにすむようになった。
あるいは、「ES細胞」や「iPS細胞」を使った「再生医療」によって、移植用臓器を得られる希望を持てるようになった。
難病に冒された人は、「遺伝子治療」によって治癒の可能性が出てきた。

しかし、医療の発達は、期待や希望ばかりを生み出したわけではない。
これまで人類が経験したことのないような問題を突きつけてもいる。
たとえば、「体外受精」においては〝余剰胚をどう扱うか?〟といった問題、「脳死」においては〝脳死は人の死か?〟といった問題、「再生医療」においては〝ES細胞をつくるために人間の胚を壊すことは殺人に等しいのではないか?〟といった問題である。
また、医療の発達は延命治療を可能にしたが、過剰な延命治療は「安楽死・尊厳死」や「QOL」(生命の質生活の質)の問題を投げかけた。

一方、医療の発達は、それまでの医療における人間関係や医療そのもののあり方を変えた。
上下関係にあった医師と患者との関係が対等になるにつれ、「患者の自己決定権」が唱えられるようになった。
また、医師が中心となって患者を治療=「キュア」するというあり方は、医療関係者でチームを組んで患者を総合的に「ケア」するというあり方へ変わってきた。

生命倫理学」(bioethics)は、こうした医療の発達に伴う問題を対象とするのである。

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