QLOMAGA[クロマガ]|哲学系情報マガジン

20世紀は「社会主義」の時代だったと言われる。
「社会主義」とは、土地や資本を所有する資本家が富を蓄積する一方で、劣悪な労働環境に置かれた労働者が貧困や病気、失業に苦しむという状況を生み出した「資本主義」の社会に革命を起こし、搾取や階級対立がない理想の社会をつくりあげようとする思想と運動のことである。
ドイツの哲学者カール・ハインリヒ・マルクス(Karl Heinrich Marx、1818-1883)によって唱えられた。

疎外論

マルクスによれば、労働は、人間の本質である。
労働は本来、自然界に働きかけ、モノをつくり出し、人間の生活を向上させる。
また、労働は、たんに生活の手段であるばかりでなく、人間に喜びや生きがいを与える。
そして、そうした労働を通じて人間同士は結びつき、社会的に連帯する。
こうした人間のあり方を、マルクスは「類的存在」と呼んだ。
一方、資本主義社会においては、資本家は生産手段を提供し、労働者はその生産手段を使って商品をつくり、賃金を受け取る。
しかし、資本家は、設備投資などによって生産性を向上させ、余分に生産された商品の利益=「剰余価値」を自分のものにする。
これは、労働者の側からすれば、余分にタダ働きさせられていると言える。
つまり、労働者は「搾取」されているのであり、労働は資本家によって強制される行為になってしまっているのである。
このように、労働が人間にとって本来のあり方ではなくなってしまう状態のことを、マルクスは「(労働の)疎外」と呼んだ。
そして、労働者を疎外から解放するためには、革命による社会主義社会の実現しか方法はないと主張したのである。

唯物史観(史的唯物論)

マルクスによれば、革命は歴史の必然なのだという。
そのメカニズムは、こうだ。
まずマルクスは、生産手段や生産活動といった経済(生産様式)を「下部構造」と呼んだ。
また、政治や思想、宗教といった制度・文化を「上部構造」と呼んだ。
そして、下部構造が土台となって、上部構造としての社会制度のあり方を決めると考えた。
ところで、生産における人間関係である生産関係は、いったん構築されるとなかなか変化しない。
しかし、生産力が向上すると、その生産力(下部構造)と生産関係(上部構造)のあいだには矛盾が生じ、「階級闘争」(資本主義においては資本家vs.労働者)が起きる。
すると、下部構造が上部構造を規定しているのであるから、その矛盾や闘争は制度・文化を動かす力となってくる。
こうしたプロセスは歴史の必然であり、その結果、革命が起きる。
これまで人類は、原始共産制、奴隷制、封建制、資本主義と変遷してきたが、矛盾を抱えた資本主義は革命によって、今度は社会主義、そしてさらには、その理想形である共産主義へといたる——
このようにマルクスは、生産力と生産関係の矛盾や階級闘争が革命を起こし、新たな社会(生産関係)への移行をもたらすと考えたが、彼のこうした歴史観を「唯物史観」もしくは「史的唯物論」と言う。

ブックガイド

カール・マルクス』(佐々木隆治 著)
▼〝誰でもわかる入門書〟では決してないが、マルクス思想の核心や意義について知るには打ってつけである。少しがんばって読めば、マルクス理解に大いに役立つ。
高校生からわかる「資本論」』(池上彰 著)
▼マルクスと言えば『資本論』だ。しかし、『資本論』は難解なことで有名だ。その難解な『資本論』の全体像を、解説の名人・池上彰氏が文字どおり懇切丁寧に説き明かしている。
超訳『資本論』』(的場昭弘 訳著)
超訳『資本論』第2巻』(同上)
超訳『資本論』第3巻』(同上)
▼マルクス研究者の的場昭弘氏が、『資本論』全3巻をそれぞれ「超訳」。文章そのものは読みやすいが、なにせ元がむずかしいので、初めから内容まですんなりわかるというふうにはいかない。しかし、このような〝超訳本〟が出ること自体が画期的だ。かなりの助けになると思う。上記の池上氏の入門書に目を通してから読むと、より理解度が高まるであろう。